東京海上ビルとは、

 東京丸の内にある東京海上日動火災保険本社ビル(以後東京海上ビルと略称)は、建築家前川國男の設計によって1974年に竣工した超高層ビルで、建築作品として非常に優れており、最高レベルの超高層建築です。

建築基準法による31mの絶対高さ制限が容積規制へと移行し、超高層建築が可能になった時に、これからの都市空間のあり方を模索し、建築を高層化して太陽の光が差し込む広場を足元に確保することで、豊かで人間にやさしい都市空間を作ろうとして建てられた建築です。

これについて、設計者の前川国男は次のように述べています。

「海上火災はあの敷地に1,000%の建築容積を建築するには、高層にして建ぺい率を約3分の1に押さえてた方が『公益』に貢献するゆえんであるとの判断にもとづいて、あえて工費上、また、いわゆる事業採算上の利点を抑制して高層計画踏み切ったものである」

 1966.12.「再び都市美について」

「現代都市によって破壊された自然を回復し、緑と太陽の空間を人間の手に取り戻す手段・・・『自然』につつまれ、自然に参加する『人間』を確立する方途に建築物を空高く積み上げて、緑と太陽の自由な都市空間をつくり出す以外にどんな手段がありうるか」    

1967.12「超高層ビルの意味」

 前川は、都市に太陽が降り注ぐ、自由でオープンな広場を確保することが、これからの都市空間にはとても重要だと考え、その手段として超高層ビルを考えていました。その意味を理解し、企業の社会的責任を果たし、「公益」に貢献する決断を前川と共有した、当時の東京海上火災保険会社経営者達の英断によって、現在のビルは建てられ、都市における超高層ビルのあるべき姿の一つとして存在しています。

東京海上ビルの解体・建替の計画

現在の東京海上ビルが超高層ビルとして竣工してから46年しかたっていません。 にも拘らず、東京海上日動火災保険株式会社はこのビルを解体し、新たなビルを建設(2023年度着工、28年度完成予定)するために、22年6月までに本社を移転することを発表しました。私達は、この解体・新ビル建設の情報を発表前に入手し、何とかこの建築が存続できるよう、新ビルの設計者である三菱地所設計及び東京海上日動火災保険の管理部門の方々と話し合いましたが、物別れに終わりました。

存続運動の難しさを分かってもなお活動を行う。

存続運動が非常に難しいことが徐々に分かってきました。その理由は、

  1. 建物が公共施設でなく、民間所有物であること。
  2. 建物の利用者が東京海上とその関係者だけであり、一般市民の利用がないので、利用者からの存続への希望が出にくいこと。
  3. 建築物の著作権は、日本では非常に評価が低く、公共建築の設計では契約書でその放棄を書かされることすらあること。
  4. この建築で最も大切な広場への評価も時代と共に変化しており、計画時に考えられた、太陽と緑に恵まれ、市民が自由に出入りできる、都市空間のあり方としての広場というより、もっと気さくで親しみ易い、つまりお茶が飲めておしゃべりができるカフェ的憩いの場の方が当世風で市民に受け入れ易いこと、

等です。こうした問題点を理解した上でも、なお、東京海上ビルは存続させる価値があり、この建築を失うことは、日本の建築文化や都市景観上の一大損失であると考え、存続のための活動を行うことにしました。

私達が存続を望む理由

 私達にとって、東京海上ビルは

  1. 建築作品として非常に優れており、日本が持ち得た最高レベルの超高層建築であり、その作品を取り壊すことは、まさに文化に対する冒涜であること。
  2. 日本の都市景観のあるべき姿の一つを提示しており、太陽が降りそそぐ自由な広場と一体となって、豊かで人間にやさしい都市空間を具現しており、今後の都市景観への大切な指標であること。

    現在、丸の内地区の再開発で建設される、敷地をできるだけいっぱい利用した上で、さらに200Mもの高さの超高層ビル群は、都市空間としてこれで良いのだろうか。こうした状況に警鐘を鳴らす存在であること。
  1. 日本の都市計画史上の輝かしい記念碑であり、都市計画の方法とし容積制を導入したおり、その理念を正しく理解し、政治的圧力にも屈せず、広場と一体となって具現化した建築であり、今後、都市計画が現実的利益誘導や政治的圧力に、方向を間違えないためにも、あるべき姿を提示している道標(みちしるべ)となっていること、、

が存続を願う理由です。

本会設立の経緯

2021年3月25日に本社移転のニュースをリリースした東京海上ホールディングス株式会社と東京海上日動火災保険株式会社は、東京海上ビルディングを解体し、新・本店ビルを建設すると発表し、さらに新たな計画のコンセプトを9月30日に公表しました。

 我々はこうした報に接し、東京海上ビルディングの存続を願い、計画の変更を求めて活動する「東京海上ビルディングを愛し、その存続を願う会」を前川事務所OBが中心となって結成し、活動を開始しました。

本の出版

その活動の一環として我々の考えが多くの方の共感を得られるものかどうかを知るため、多数の皆様のご意見をお聞きし、これを一冊の本「え!ホントに壊す!?東京海上ビルディング」として出版することができました。幸いなことに、80名以上の原稿をお寄せいただいた方々からは我々の活動に賛同し、協力・参加したいとの申し出も多く寄せられました。また、本をお読みになった方で、この活動を拡げるため、本を何冊か購入し、知人に我々の活動をお伝えしてくださる方も多くいらっしゃいました。

今後の活動のために皆様の参加を

 より多くの皆様に参加いただいて活動する我々の目標は次の二つです。 

  1. 東京海上ビルを保存改修して蘇らせること。
  2. 優れた建築作品が大切な文化遺産として評価される社会のしくみづくりに一石を投じること。

目標1.東京海上ビルを保存改修して蘇らせる活動

新たな会として、この活動を更に進める理由は、

  1. 東京海上ビルディングは、大変優れた素晴らしい建築であり、建築遺産として残すべき日本文化の大切な作品であること。
  2. 都市計画史上の貴重な生き証人であり、着工前の不毛な美観論争という名の政治的圧力に建主も建築家も屈せず、都市デザインの優れた解答の一つとして創られた記念碑的作品であること。
  3. 東京駅と皇居を結ぶ行幸通りがお濠に面する角地に位置し、景観の要として素晴らしい都市景観を形成しており、多くの人々が称賛し、記憶に留めていること。
  4. これからの環境や社会のあり方を考え、地球文明や人類の生存を願うSDGsの立場からは、安易な建替による更新ではなく、保存・再生を心から願うこと。

であり具体的な提案として

  1. SDGs等の視点からCO2 排出量が少ないだけでなく、コスト面からも有利であること。
  2. 地震対策や水害等の防災対策が改修でも十分可能であること。
  3. デジタル対応を含めた抜本的機能更新・向上が改修でも可能であること。

等を提示して広く市民に公開し、保存再生への賛意を集め、建替による計画の再考を促すと共に、優れた建築や都市の景観を守るために、大規模改修による東京海上ビルの再生を働きかけます。

目標2.優れた建築作品が、大切な文化財として評価される社会のしくみづくり

今までの活動を通じて見えてきた問題は、優れた建築を文化・芸術作品として評価し、大切な遺産として守っていき、都市環境の中に位置づけることがなく、安易に壊して建替えてしまうことに疑いを持たない、この国の価値観です。こうした風潮に歯止めをかけ、優れた建築が人々の記憶をつなぐ重要な文化財として、都市計画や制度の中に位置づけられるよう働きかけていく活動をしていきます。

皆様のご参加・ご意見・ご助言をお待ちしています。